家庭で簡単にできるさつまいも栽培の全ガイド!基本的な栽培方法から収穫、保存のコツ、害虫対策まで完全網羅

さつまいもは、煮物や天ぷらといった日常の料理に加え、スイートポテトや干し芋などのスナックとしても利用価値が高いです。
比較的乾燥に強く、貧弱な土地でもよく育つことから、家庭菜園での栽培が推奨される野菜の一つです。
通常は広い畑での栽培が一般的ですが、コンパクトなプランターを使用しても充分に育成可能です。
本稿では、さつまいもの栽培を始める初心者に向けて、基本的な手順やポイントを詳しく説明します。

目次

さつまいもとはどのような野菜か?

中南米が起源で、ヒルガオ科サツマイモ属に属する根野菜のさつまいもは、17世紀に東南アジアや中国を経由して沖縄や九州へ持ち込まれました。

さつまいもはエネルギー源としての炭水化物に富む一方で、ビタミンC、βカロテン、カリウムなどの栄養素も豊富に含まれています。これらの栄養価の高さから、飢饉や戦時の食料難の時期に多くの日本人の食生活を支えました。その自然な甘さは、日常の食事やスナックにも好まれています。

さつまいもの主な品種について

さつまいもには、現在栽培されているだけで約40〜60の品種があります。市場で一般的に見ることができるのはベニアズマで、これは日本国内で栽培される青果用さつまいもの中で最もポピュラーな品種です。

他にもいくつかの品種があります:

安納紅(安納いも)は、鹿児島県種子島が特産地で、濃厚な甘さが特徴です。
べにはるかは、糖度が高く、料理やデザートの幅広い用途に適しています。
高系14号(鳴門金時・紅さつまなど)は主に西日本で栽培され、多くの地域で品種改良が行われています。
アヤムラサキは鮮やかな紫色が特徴で、装飾的な用途にも使われます。
シルクスイートはその名の通り、絹のような滑らかさと甘さで、デザート向けに人気です。
クイックスイートは電子レンジで簡単に調理が可能で、通常のさつまいもの味を楽しめます。

栽培が容易な品種には、多くの収穫が見込めるベニアズマや、貧弱な土でも育ちやすい鳴門金時があります。品種選びは、食感や味の好み、地域の環境、苗の入手可能性に基づいて決めるのが良いでしょう。

さつまいもの栽培環境

さつまいもは、排水が良く風通しの良い土壌を好む植物です。暑さや乾燥にも強く、栄養価が低い土でもしっかりと成長します。

さつまいもの収穫時期

植える時期や気候に影響を受けるものの、通常は9月から12月にかけてがさつまいもの最も良い収穫期です。 収穫後は室温での保管が可能で、そのため年間を通じて市場に供給されることが多いです。

さつまいも栽培から収穫へのステップ

さつまいもは排水性と通気性に優れた痩せた土を好む作物です。栽培には市場で手に入る「さし苗」と呼ばれる苗木を使用します。

特に家庭菜園での栽培はプランターや庭が適しており、今回は特に手軽に始められるプランターを用いた方法をご紹介します。

プランター栽培に必要な用品

プランターでさつまいもを育てる場合、以下のアイテムが必要になります。

さつまいもの苗
容量の大きいプランター
野菜栽培用の土
鉢底石
移植用スコップ
園芸用のはさみ

プランターの選び方

さつまいもは蔓の成長が盛んなため、プランターでは大きめのものを選びます。一般的には深さ30cm、奥行き30cm、幅は65cm以上が推奨されます。これにより根が地中で十分に伸び、収穫量を増やすことができます。
最近では、不織布でできた大型プランターも人気です。
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さつまいも苗の選び方

さつまいもの苗は、他の芋類と異なり、「挿し穂」や「挿し苗」と呼ばれる苗を使用します。これはさつまいもの蔓の部分を利用したもので、一般に30〜40cmの長さで販売されます。

苗の質によっては収穫の量や品質が大きく変わるため、選ぶ際には以下の点に注意しましょう。

さつまいも苗の選び方のポイント
甘くて質の高いさつまいもを収穫するためには、良い苗の選定が重要です。
茎が太く柔軟で、5〜6枚の葉がついている強健な苗を選びます。
葉が厚く広がり、濃い緑色をしているものが健康の証です。
節間が適度に詰まっており、節数は4〜5節、長さは15〜20cm以上のものが理想的です。

土の準備

さつまいもの栽培には、市販の培養土でも十分です。

理想的な土壌のpHは5.5から6.0の間です。自家製の土を作る場合は、赤玉土4、堆肥3.5、腐葉土1.5、バーミキュライト1の割合で混ぜ、用土10リットルに対して10gの石灰を加えるのがおすすめです。

痩せた土で育つさつまいもは、肥料の吸収効率が高いため、過剰な肥料は避けるべきです。肥料が多すぎると、「つるぼけ」を引き起こす可能性があります。これは肥料過多により葉や茎が育ちすぎて、実が充分に育たない状態を指します。

前作の作物があったプランターを使用する場合は、残留肥料を考慮して肥料を与えずに栽培すると良いでしょう。

さつまいもの植え付け時期

地域によって異なりますが、植え付けに適した時期は平均気温が18℃以上の時です。通常は地温が15℃以上の5月中旬から6月中旬が適切です。

苗の植え付け方法

植え付け前には、苗を水に浸して十分に水を吸わせます。これにより苗が元気を取り戻します。

プランターの場合(奥行30cm、深さ30cm、幅65cm程度)、植え付けられる苗の数は2~3本です。プランター底に約2cmの鉢底石を敷き詰め、その上に培養土を8分目まで入れ平らにします。

植え付け方法は以下の通りです。

「斜め植え」: 苗を斜めに植える方法で、短い苗に適しています。
「水平植え」: 苗を水平に植え、5〜10cmの深さの溝に置き、苗の先端のみを地表に出します。長い苗向けです。
「船底植え」: 苗の両端を地表に出し、中央部分が土中にある形で植えます。これにより収穫量が増える可能性があります。
「垂直植え」: 苗を垂直に植える方法で、手間が少なく、実が大きく育つ特徴があります。

植え付けた後は、水を十分に与え、生長点と葉が地表に出るようにし、最初の10日間は土が乾かないように注意して水やりを行ってください。

追肥について

植え付けから最初の1ヵ月は、追肥を避けることが重要です。これはつるボケを防ぐためです。さつまいもは植え付け後約90日後にはじめて肥大化が始まります。もしもつるの成長が遅かったり、葉の色が薄い場合は、その時点での追肥が効果的です。特に7月から9月の高温期には、葉の黄変をチェックし、成長が不十分な場合はボカシ肥料を施すと良いでしょう。

水やりの指針

苗の定着期間中の最初の1週間は毎日朝に水を与えます。その後は、土の表面が乾いたら適宜水をやるようにします。

畑では雨水が充分に供給されることが多いため、追加の水やりは基本的に必要ありません。しかし、プランター栽培の場合は土の乾燥を確認してからたっぷりと水を与えます。

真夏の高温時に葉がしおれたり丸まるのは、水分不足の兆候です。その際は鉢底から水が流れ出るほどしっかりと水を与えることが望ましいです。水やりは、日が昇る前の涼しい時間帯に行うと効果的です。

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さつまいもの収穫時期と方法について

収穫時期の目安

さつまいもは通常、9月から12月にかけて収穫されます。植え付けから収穫までの期間はおおよそ110日から150日ですが、年による気候の違いや栽培環境、さつまいもの品種によって収穫時期が前後することがあります。

収穫の最適なタイミングは、さつまいもの葉の変化で判断します。もともと緑色の葉が枯れ始めて黄色に変わる時が、さつまいもが成熟しているサインです。

収穫は天気の良い日の早朝に行うのが理想的です。この時間帯に収穫することで、その日のうちに天日干しを行い、保存前の乾燥を促すことができます。

試し掘りの実施方法

実は、過剰に成長したさつまいもは見た目の質が落ちるだけでなく、甘さが減少して美味しくなくなることがあります。さつまいもの品種にもよりますが、一般的には長さ20〜30cm、直径7cm程度で収穫の最適時期とされています。この収穫時期を確認するため、予定された収穫の約1ヶ月前に「試し掘り」を行うことが重要です。

試し掘りの際に、さつまいもがまだ小さい場合は、それを再び土に戻し、更に2週間成長させた後、再度試し掘りを行ってサイズを確認します。このプロセスを通じて、最適な収穫タイミングを見極めることができます。

具体的な収穫方法

収穫前には、邪魔なつるを事前にカットしておきます。スコップでさつまいもの根本の土を慎重に掘り起こし、土を柔らかくしてから収穫を開始します。掘り進める際には手袋をして直接土を掘り、さつまいもを傷つけないように注意しながら根周りの土を取り除きます。

収穫後のさつまいもの適切な保存方法

収穫後はさつまいもを常温で乾燥させ、自然な追熟を促します。追熟期間を経ると、さつまいもはより甘味を増しますが、約1週間程度追熟させた後に消費すると最も美味しくいただけます。傷がついたさつまいもは腐りやすいため、迅速に食べるか処理することが推奨されます。

さつまいもは収穫後すぐに食べても美味しいですが、収穫後1〜2週間でデンプンが徐々に糖に変わり、さらに時間をかけることで甘みが増します。このため、収穫後の保存方法がさつまいもの風味に大きく影響します。

適切に保存することで、収穫後約3ヶ月間、さつまいもの美味しさを保つことができます。ただし、さつまいもは保存中に非常に繊細なため、温度と湿度の管理が非常に重要です。

さつまいも栽培における主要な病気とその対策

さつまいもの健康な成長を害する主要な病気をいくつか紹介します。

うどんこ病

この病気は葉に白い粉状の斑点が出現することが特徴で、これが拡がると植物の光合成能力が阻害され、成長が停止します。湿度が高い環境下で特に発生しやすくなります。

帯状粗皮病

この病気はモモカアブラムシが媒介することによって発生し、葉間に薄黄色の斑点が現れ、その周辺が紫に変色する特徴があります。

黒斑病

このカビ性病害は、さつまいもの葉や根に黒い斑点を形成し、植物の感染を引き起こします。収穫後の保管中にも発生する可能性があります。

立枯病

土壌に由来するこの病気は根を侵し、さつまいもの成長を妨げ、最終的には植物が枯死します。

つる割病

土壌中の糸状菌が原因で、特に根の傷口から侵入して症状が現れます。

斑紋モザイク病

この病気は葉脈間にモザイク模様の黄色い斑点が出現します。

基腐病

過剰な湿気が原因で発生するカビが引き起こす病害で、茎が基部から腐り始めてしまいます。

排水の悪い土地や湿気が多い場所では特にこれらの病気が発生しやすいので、風通しを良く保つことが重要です。病気の初期症状を見つけたら、速やかに病気の部分を取り除くことで、さらなる被害を防ぐことができます。

さつまいも栽培における主な害虫対策

さつまいもの栽培中に遭遇する可能性のある主な害虫とその防御方法を紹介します。

ヨトウムシ

特に9月から10月にかけて活動が活発になり、夜間に葉を食べることが多いです。葉に穴が空いている場合は、ヨトウムシの食害のサインです。

アブラムシ

これら小さな虫は葉の裏側に群生し、植物の汁を吸い取ります。

カメムシ

植物の茎や新芽をターゲットにし、吸汁活動によって植物の萎れや成長障害を引き起こします。

コナジラミ

これらの白い虫は葉の裏側で活動し、吸汁により植物の色が褪せたり成長が悪くなることがあります。

ハダニ

葉の表面に小さな白い斑点を作り、重症化すると葉が糸で覆われ枯れてしまいます。

対策方法

害虫の予防は、発生の初期段階で対応することが重要です。適切な雑草管理を行うことで、害虫の侵入を最小限に抑えることができます。

連作障害とコンパニオンプランティングについて

さつまいもの連作障害

さつまいもは後作に特定の野菜を避ける必要があるわけではありませんが、アブラナ科の野菜、特にカブとの相性はあまり良くありません。ヒルガオ科の野菜を同じ土地で再び栽培する場合は、1~2年の間隔を空けてからの再栽培が推奨されます。

さつまいものコンパニオンプランティング

コンパニオンプランティングとは、異なる種類の植物を近くに植えることで、互いの成長を助け合ったり、害虫の誘引を抑えたりする農法です。

さつまいもの良いコンパニオンプランツには、赤ジソやマメ科の作物、なすが挙げられます。赤ジソは、さつまいもの肥料の過剰摂取や害虫の発生を抑える効果があるとされています。これは赤ジソが土中の余分な栄養を吸収し、さつまいもの一般的な問題である「つるぼけ」を防ぐ助けとなるためです。

また、マメ科の作物にはつるなしササゲ、つるなしインゲン、エダマメがあり、これらはさつまいもと同じく肥沃でない土壌でも良好に成長する特性があります。これらの植物をさつまいもの近くに植えることで、土壌の健康を保ちながら生育を促進することができます。

まとめ

ここまで、さつまいもの栽培から収穫、そして保存方法に至るまでの全プロセスを詳細に解説してきました。さつまいもは、栄養価が高く、育てやすいため、家庭菜園に最適な作物です。適切な品種選びから、土の準備、植え付け、水やり、追肥、そして適切な収穫時期の見極めまで、一つ一つのステップを丁寧に実行すれば、美味しいさつまいもをたくさん収穫することができると思います。このガイドを参考に、ぜひ豊かな収穫を楽しんでください。

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